ECO への道路標識

ECO JAPAN CUP 2012 入選作品


人間と自然という関係がこれからうんとできないとね、
人間はかわいそうなものになるんじゃないかということ…
僕はまだはじめてこれからですから、ようやっと少しわかってきたようなことだけです。
これを僕の手から、だれか他の人がもって走ってもらいたい。


イサム ノグチ


道路標識という広く親しまれているデザインのフレームに、エコのメッセージを込めたピクトデザインである。環境問題に病める地球、危機に瀕している動物たち、温暖化による北極の環境変化などの厳しいテーマを、誰にでも読み取れるイメージにより、人間のもつ優しい心を呼び起こすように伝えることを目的とした。
きっかけとなったのは、馬事公苑(世田谷区)の中で、「ひと」と「馬」の道の区分を並記した標識を見たことである。人間と馬が当たり前のように平等に道を分け合うという考え方に、人間中心の標識に見慣れてきた私がはっとさせられたことが、考えの始点となっている。

「地球の将来への案内標識」:
高速道路のサービスエリアを示す案内標識の形で、森の樹々と星空のある未来を示す標識とした。地球と人間の将来に対する「希望」を託したデザインとなっている。
「動物と人間の共存1」:
大型車の車線区分を示す道路標識を原型に、シロクマとペンギンと人間の道を平等に区分(体の大きさに配慮してシロクマの部分が多少広くなっているが)を明記した標識である。
「北極の環境変化」 :
「落石注意」の標識をもとに、温暖化による北極の氷の減少を、行き場を失うシロクマの親子の姿を通して警告している。
「病める地球」:
「スリップ注意」の交通標識を原型とした、環境問題に病み、迷走する地球の将来に対しての注意標識となっている。
「動物と人間の共存2」:
ペンギンの背中を支えながら横断歩道を渡る男の子の姿に,人間と動物の共存の可能性を表現したもの。

人間が進んでいく「道」は、これから私たちがどういう方向に進むことを選択するかによって、行き先が大きく変わってくる。環境問題というと悲観的になりがちであるが、現実の状況をしっかりと理解し、どのように進んでいくかによって、地球の環境も良い方向に舵を取り直せることを、道路標識という形で前向きに表現したいと考えた。

緑の森や海や星空、そういった自然は動物たちにとってだけでなく、人間にとっても宝物である。私たちが現代社会の速いスピードで日々を走り抜けながらも、地球の将来への道の選択に一瞬でも思いをはせることから、エコが始まるのではないだろうか。

鞍谷万樹設計事務所 / 鞍谷万樹

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